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今日は世界結核デーです。 1882年、ロベルト・コッホ博士が結核菌を発見したことを記念して、世界保健機関(WHO)が制定しました。現在でも、結核はエイズやマラリアとともに世界的に最大級の健康問題となっています。 世界で新たに結核を発病する人は年間960万人、結核で命を落とす人は150万人と推定されています。結核は低・中所得国を中心に、特に貧困層など社会的弱者と呼ばれている人々の中で蔓延しています。また、治療が難しい多剤耐性結核やアフリカにおける結核とHIV/エイズの重複感染も課題となっています。こういった多剤耐性結核は、一般的な処方薬ではまったく効き目がなくなる場合が多く、治療も非常に難しい場合が殆どです。 ちなみにですが、結核とは実際に感染したからと言って必ずしも発病するとは限りません。所謂潜伏期間がかなり長く、一般的に半年から2年程度と人によってかなりのばらつきがあります。体力が低下した際に合併症として症状が出る場合もあり、症状が進行すると血痰や食欲低下、体重減少、肺の病変に伴う呼吸困難や骨、腸管、腎臓などの肺以外の臓器にまで伝染した病変などが起き、最終的には死に至る恐ろしい病気です。 なお、WHOが調査した世界結核報告書によれば、結核の新規症例は世界中で58万件ともいわれています。さらに、この中で多剤耐性結核と呼ばれる前述した治療の難しい合併症を含む症状により命を落とした人数は約19万人と推計されます。分布地域としては、東南アジア地域と西太平洋地域に新症例の約40%が集中しており、言葉は非常に悪いですが所謂医療後進国においては発症率も死亡率も非常に高いものであると言わざるを得ません。 こういった症例には薬事承認された特効薬が既に開発されており、「ベダキリン」と呼ばれるアメリカのニュージャージー州にあるジョンソン・エンド・ジョンソンという会社が開発した薬と、「デラマニド」と呼ばれる日本の大塚製薬が開発した薬の2種類があります。ですが、こういった治療薬は値段もそれなりにするもので、この新薬を投与すれば助かると言われている患者は約15万人にものぼりますが、実際にこれら新薬を投与されて治療に成功する患者は僅か5%程の7500人弱に留まります。治療対象者の大半が新薬を利用できず、様々な合併症に苦しみながら生涯を終える場合がほとんどで、既存の治療薬では1万5000錠を2年以上にも渡って投与し続けてようやく50%程の患者が治癒されるレベルでしかないそうです。 そういった状況を鑑みて、日本の大塚製薬は世界抗結核薬基金(GDF)を介し、低・中所得国の大半が対象となる販売価格を設定していますが、その価格は6ヵ月の治療コースで1700ドル(約18万9700円)にもなります。デラマニドは既存のDR-TB(結核)治療薬と常に併用されるため、治療費の合計額は、各国政府にとっても患者にとっても高すぎるもので、結核の高まん延国を中心とした広い地域での薬事登録と、医薬品特許プールとの自発的ライセンス許諾契約を結ぶための交渉が、これから求められるでしょう。 これらライセンス許諾契約を結べば、ジェネリック薬メーカーもこれら新薬の生産を開始する事が出来、各国においても適正な価格で普及させることができるはずです。 一刻も早くこういった権利関係の問題を処理して、世界中で苦しんでいる患者たちのもとへ薬が届けられる時代が来ればいいですね。
okimotogairu

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okky1

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realblack

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Cat1

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